東京葛飾・残余地銀座

東京都葛飾区


 実に6年ぶりの更新である。

 サイト開設から数えると7年経ったのに、当サイトで紹介してきた物件は、自分の知る限り何も変わっていない。残余っぷりに拍手だ。

 昨日このサイト造ったんです。

 と嘯いても通用する。

 このまま100年でも200年でも残余して、それぞれの町の歴史の生き証人となっていただきたい。

 さて、7年前には存在しなかったツイッターにより、住宅都市整理公団の総裁さん(@sohsai)を始めとするドボク系の方々と接点ができ、2010年5月23日に残余地ツアーを行う運びとなった。(総裁さんが作成して下さった、ツアーの告知

 (参加して下さった皆様、雨の中、大変お疲れ様でした。ぐだぐだな計画とガイドでごめんなさい……。今後の反省材料にします。)

 そのツアーで訪れた、京成電鉄押上線四つ木〜京成立石間の南側に位置するこのエリア。


 東京西部の郊外で育った自分にとって、残余地は住宅団地の片隅に“たまにあるもの”だった。だからこそ珍しいと思ったし、鑑賞すべき対象としての意義も感じたのだ。

 あっちを見てもこっちを見ても残余地がある、そんな土地があるなんて正直夢にも思わなかった。いや、そういう場所があったらいいなと夢見てはいたが。

 これはどういうことか。下町ならではのゴチャゴチャなのだろうか。いや、純粋な下町は狭いながらも区画が矩形で、残余地はあまりないと思う。

 葛飾区のような、郊外と下町のメスティーソこそ、新旧の区画がくんずほぐれつ、程よい残余地銀座が生まれるのであろう。

 建物は郊外の商店風だが、「どこにでも植木を置きたがる」という行為は下町的。郊外のリズムの上に、下町のメロディが鳴り響く心地よさ。

 店頭に置くタイプの看板を残余地まで運んできて、お店のアピール。残余地の有効活用。読み方も間違えないようにフリガナでアピール。

 テトリス残余地を彷彿とさせる。自販機の裏はバイク置き場。ぬかりない。

 六叉路の全ての方向に向けられた信号機。東京都大田区の信号機のない七叉路は「日本一ゆずりあいモデル交差点」なのだそうだが、その論理で言うとここは「日本一ゆずらないモデル交差点」だ。葛飾区の手厚いインフラ整備に涙が出た。雨でごまかした。

 鋭角式2項道路? こんなトリッキーな図形も平然と繰り出してくる。恐るべし葛飾の路上。しょっちゅう振り返っていないと見逃してしまう。残余地観察には後ろ向きな心が大切だ。

 鋭角式タンク置き場。何百年経って、周りの景色がすべて変わっても、ここはタンク置き場であってほしいと願う。

 純粋残余地。これは一体どういうメッセージなのだろう。何かの乗り場なのか。ゴーストワールドのノーマンのごとく、この島の上でバスを待ち続けたい気持ちになった。

 もじゃもじゃのわっさわっさであった。

 参加者が一点に集中していたので、何だろうと思って近づいてみたら、こんな謙虚な残余地が。彼女(これは女性だと思う)がこんなに注目を浴びたのは、後にも先にもこれきりだったであろう。

 こちらは小さくて無毛。それ以外に何て表現すればいいんだ。

 結界タイプ。このタイプの残余地なら誰でも造れそう。一家に一残余どうですか。

 三角形の隅々まで利用すべく、芸術的とも言える建て増しを施しているお宅もあった(建築には興味ないので、全体像は撮らなかったが)。しかし三角形の頂点まで埋めることはできなかったようだ。

 小さくても、はえている。他にどう説明しろと。右にあるのは、参加者が置いてくれたタバコの箱。比べればその小ささが分かるだろう。

 こんな風に、売り場スペースとして活用することもできる。しかし高度に活用しすぎて、肝心の靴が見当たらない。

 エアコン室外機と、朽ちた看板。残余地がお送りする虚無の空間。参加者の皆さんは、向こうの共食いキャラに夢中。ホラもう僕と君しかいないよ。

 そてつ、ランタン型の街灯、ワッカの柵……昭和テイスト。そこはかとない懐かしさに涙が出たけど雨でごまかした。建物がないのに昭和っぽさを演出できる。残余地の表現力にはしばしば驚かされる。

 阿部定物件(超芸術トマソンの一)発見。何とも男らしい。機能はしないが。

 灰皿のある残余地ではしっかりと喫煙。礼儀正しくてよろしい。

 ブロックが並んでいるが、地形は斜め。昔のマリオだったらバグで挟まって死ぬフラグ。

 こういうの都築響一さんの書籍で何度か見た。秘宝館のあれ。女性のマネキンにこういうのが付いてるやつ。みなまで言わせるなばか。


 ――という具合である。

 実際には、ここで紹介した倍近くの残余地が存在しているので、奇特な方はぜひ見に行ってみるといい。

 地元の方に何か問われても、決して「THE 残余地を見て来ました!」とは言わないように……。

 最後に、ツアーを企画して下さった総裁様、ぐだぐだガイドをフォロー&盛り上げて下さった参加者の皆様本当にありがとうございました。こんな事ができるなんて6年前の自分は思ってもいませんでした。


【戻る】