結界

東京都町田市森野


 格子状の街並みが、曲がりくねった旧道(写真右側)にめり込むように形成され、三角地が発生した。しかし町田はエレガントな町なので、短絡的に「三角形の家」が建ったりしないのが、東京らしくない。
 意味ありげな黄色い”結界”が、通行人の記憶に突き刺さる。一見「鬼門」のように見えるが、東西の方角が逆だ。路上にこんな三角形が描かれていると、どうしても風水的な意味を汲み取りたくなってしまうのが東洋人の性というものだが、日本には風水地理学などの学問は存在しないので割愛。どうやらこの結界は、「ここに防火水槽があるぞ」という路上の情報を示すサインのようである。
 地上はゴミ捨て場(兼・舗道)、地下は防火水槽。ゴミ捨て場と防火水槽の重層的空間だ。土管は水槽の取水口であると同時に、ゴミ捨て場であることを標示するアイストップも兼ねている。途轍もなく地味な重層的空間だと思われるだろうが、どちらも都市には欠かすことのできない重要なスペースなのである。


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