窓からポイ棄ての法則

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■二階の窓から何でも棄てまくる家庭

 二階の窓から物を投げ捨てる。作中ではごく当たり前なこととして、平然と行われている行動である。いやしかし、ある家庭が平然と二階の窓からものを投げまくっている風景を目の前にして、誰が気にせずにいられるものか。てんとう虫コミックス未収録のある話では、これが原因で交通事故の発生に至ったこともあるのだ。

 彼らは何ゆえに二階の窓から物を投げるのか?。ここではパターン観測の視点から、ポイ棄て行動に至るまでのメカニズムを分析してみよう。

■窓からポイ棄て履歴

発見場所 犯人 捨てた物 証言 落下地点 備考
TC2巻
「かならず当たる手相セット」
キイちゃん 手相を消すクリーム 「ポイ」 ダンプカーの荷台  華麗に「ダンプカーの法則」へと連鎖。
 他人の家で窓から物を捨て、出刃包丁を振り回す…こんなショッキングな赤ん坊はいないことを私は信じたい。
TC4巻
「アベコンベ」
(ドラえもん) (アベコンベ) 「こんなの捨てたほうがいいや -  だからどうして窓から捨てようとするんだ?。のび太が止めたおかげで実際には捨てていないが……。捨てたら捨てたで誰かに拾われ、また面白いストーリーが展開したことだろう。
TC5巻
「地球製造法」
玉子 地球 すてちゃいます 道路  地球が車にはねられ大破。
 一つの天体が、窓からのポイ捨てにより破壊された恐ろしい日。
TC13巻
「立体コピー」
しずか 自分の立体コピー(原寸大) 「はあいママ、すぐ行くわ」 庭(母親の目の前)  その行動が身投げを意味するということを分かっててやってるのだろうか。
TC14巻
「家がだんだん遠くなる」
のび太 買ったばかりの
野球のボール
- 野比家の入口
犬の頭上
 これは捨て犬ダンゴの効力ではない。
TC15巻
「ポータブル国会」
のび太 ゴミ 「2階の窓からゴミを捨てたでしょ」-母親談  さすがに玉子は切れる。しかしのび太のポイ捨て癖は、あんたの影響じゃないか?
TC16巻
「ナゲーなげなわ」
ドラえもん
(1階)
ナゲーなげなわ 「えへへ。どこかへしまっちゃった」  そもそも「ナゲーなげなわ」という道具をそのまま投げるという辺りが本末転倒。
TC17巻
「家がロボットになった」
ジャイアンの家 ジャイアン 不明  長い人類の歴史の中で、家に捨てられた男など彼ぐらいだろう。
TC19巻
「ロボッターの反乱」
のび太 ラジオ 「安物だし古くなったからな。もっといいの買ってもらお」  「ロボッター」によってロボット化した道具・家具が、人間に反旗を翻す。しかしこんな酷い道具の捨て方するのは野比家くらいだってば。
TC20巻
「実物立体日光写真」
スネ夫のママ
(1階)
スネ夫の立体日光写真 「いたずらばっかり!!」  女性1名ののぞき被害を加え、捨てられた写真はオチブリンガーとしての役割を発揮した。
TC21巻
「恐竜が出た!?」
のび助
(1階)
恐竜 「こんなところで虫を飼っちゃいかん」 庭→どこでもドア→高井山  本来なら出力システムに徹するはずののび助が、気まぐれで排除システムになったせいで大惨事に。野比家の住人は恐竜でも地球でも、邪魔なものなら何でも捨てる。
TC21巻
「まねコン」
しずか まねコン 「なにかしら」 犬の鼻  アンテナ系秘密道具が人間以外の生物にくっついてしまうのも、完全たるパターン。
TC22巻
「温泉ロープでいい湯だな」
玉子 温泉ロープ 「こんなひもすてちゃいます 道路  ジャイアンとスネ夫が大恥さらすはめに。はたして温泉ロープを窓から捨てることが、部屋を濡らしたことへの解決になるのだろうか。
TC22巻
「出木杉グッスリ作戦」
出木杉 グッスリまくら 「なんだ、この変なまくらは!」 出木杉家の庭  まくらは壊れた。凄い腕力だな。さすがスポーツ万能少年。詳しくは「逆・窓からポイ棄ての法則」にて。
TC27巻
「カッコータマゴ」
スネ夫のママ カッコータマゴ 「?」 ドラの口の中  この人も見事に窓からポイしてる。
TC27巻
「キンシひょうしき」
ドラえもん キンシひょうしきをはずすペンチ 「宿題が終わるまでだめっ」 庭?  この漫画の作者は、ペンチは軽いものだと思っているようだ。のび太の頭にもしょっちゅう降りかかってくるし。
TC27巻
「本物電子ゲーム」
神成さん 灰皿
薬缶
額縁

電気スタンド
「こいつめ!!こいつめ!!」 空き地
ジャイアンの頭上
 道具の効力は一切関係ありません。
TC31巻
「恐竜さん日本へどうぞ」
ドラえもん 招待錠のかけら 「あの人でためしてみよう」 通行人の口の中  こんなことが、よく出来るな。さすが22世紀のロボット。通行人は大迷惑だが。
TC33巻
「ポスターになったのび太」
しずか
出木杉
のび太 「しずちゃん!!おにわへゴミをすてちゃいけません」-しずかの母談 源家の庭  未来の妻ともう1人の男に丸め込まれて捨てられた上、お義母さんに焼かれる惨めなのび太であった。
TC33巻
「いやになったらヒューズをとばせ」
ドラえもん いやなことヒューズ 「こんなものすてちゃえ  のび太がカイぶつに。真夏の夜の出来事。
TC34巻
「自動返送荷札」
ドラえもん ガラスのカメ(マンガ) 「道にすてる 道路  また通行人が実験台。22世紀のロボットは20世紀の町を何だとおもっているんだ。
TC36巻
「タイムふしあな」
しずか タイムふしあな 「こんなもの!!」 空き地  ポイ捨ての犯人・証言・落下地点の全てにおいて信じがたい。まるでいかにもストーリーのつじつまを合わせるためのような……。
TC39巻
「ねじ式台風」
のび太 フーフーボール 「庭へ出ちゃったよ」  ボールを取りに行ったきり帰ってこない……。これじゃ「捨て犬ダンゴ」と同じじゃないか。
TC41巻
「落とし物カムバックスプレー」
のび太 野球のボール 「ためしてみよう」 戻ってきた  良い子のみんなはマネしないようにね。
TC43巻
「ラシ難チュー難の相?」
脇役の父ちゃん ラジカセ 「だまれ。あんなものばかり聞いてるから勉強がはかどらないんだ」 道路  飛行中ののび太を直撃→落下→メガネが踏まれる。のび太が立て続けに災難に遭うのは彼のパターンの勝手だが、窓からラジカセ投げるのは、とてもいけないことです。
TC44巻
「ムシャクシャカーッとしたら」
ドラえもん イス 「腹が立った時にはね、少なくともこれくらいのことしなくちゃ!」 不明  窓ガラスが割れる。せめて開けてから投げろよ。酷い奴だ。まぁ、こういう突っ込みは曲解派に任せておくか。
てんコミ44巻
「季節カンヅメ」
ドラえもん 夏の缶詰め 「ばかだなあ。夏に夏の缶詰めを開けるなんて」 となりの庭  この話は「窓からポイ棄て」にはじまり「窓からポイ棄て」で終わる。
ドラえもん 春の缶詰め
秋の缶詰め
「となりの庭の桜の横へ投げ込む」
「となりの庭の柿の木の横へ・・・」
となりの庭  20世紀の環境を進んで汚染する、22世紀のロボット。44巻は縁起の悪い数値だけあって、収録作品が呪われています。(機械猫によって)
鉄人兵団
24ページ
玉子 ジュドの頭脳 「あぶないじゃないの!!こんなもの放り出しておいちゃ」  あんたの行為のほうがよっぽど危険だ。自分でつまずいてるし。
FF1巻
「おいかけテレビ」
スネ夫 おいかけテレビカメラ 「こんなもの!」 骨川家の庭  オイオイテレビカメラ捨ててるよ。
 オイオイそれは人の物だろ。
FF2巻
「クリスマスツリーの種」
ドラえもん クリスマスツリーの種 「あーっ、落とした!」 道路  落ちた種は案の定スネ夫が拾い、話を複雑にしてくれた。
FF3巻
「マジックボックス」
ジャイアン
(1階)
マジックボックスの筒 「なんとなく気にくわない」 道路
FF3巻
「流れ星製造トンカチ」
のび太 流れ星製造トンカチ 「あんなもの!!」 道路  この話を知らない人は「なんだトンカチか」と思うかもしれないけど、「流れ星製造トンカチ」がどれだけ巨大なトンカチか想像つきますか?
 こちらもスネ夫に拾われる。アニメではジャイアンとの絡みを作るためにムクが拾っていた。
FF29巻
「万能テントですてきなキャンプ」
のび太 空き缶(展望台の窓から) 「ゴミを捨てちゃだめっ!」-しずか談  やはりのび太のポイ捨ては鼻糞ほじりなみの癖になっている。
 ……そういうしずかだって空き地に届くほどの射程でポイ捨てしたじゃないか。
FF31巻
「すなおなロボットがほし〜い!!」
のび太 おもちゃのロボット 「いきなりロボットが降ってきて、驚いてハンドルを切りそこなったんだぞ」-被害者談 道路  車のボンネットがひしゃげて、タイヤまでもげている。「弁償しろと言われても、僕はミニカーしか持っていない」ってそういう問題じゃないだろ。
FF34巻
「みせかけモテモテバッジで大さわぎ」
ドラえもん みせかけモテモテバッジ 「こんなバッジ!」 野比家の入口  大体窓から捨てる以外に処理方法は思いつかないのかい?
 パパが拾ってとんでもないオチになるパターン。あんたは仮にも一家の主なんだから、ハート型のバッジなんか拾わないでくれよ……。
CS4巻
「持ちぬしシール」
ドラえもん
(1階)
野比家最後の傘 「たとえすてちゃっても 不明  なくした物を取り戻す以前に、ポイ捨てしてることが凄い問題では。
 「たとえ」で済むのなら常識は要らないよ。
未収録作品
「犬になりたい」
玉子 犬に変身したのび太 「きゃあ!犬が爆弾を持ってる!!」 道路  実際に読んだことはないが、犬に変身したのび太はかなりでかいらしい。玉子は一体どういう鍛え方をしているのだろうか。

 他にも発見された方は、掲示板で報告して下さい。
 ※単なる窓からの出入りや人物の落下は、窓からポイ棄てネタではないので注意。

■漫画技法としてのポイ棄てネタ

【1】ストーリー上から秘密道具を退場させることで、話を複雑にする。
【2】秘密道具を本来の使用者以外の者の手に渡らせ、ストーリーの転換をする。
【2’】ストーリーを、オチへと転換する。

 上のリストを見る限り、この2つ+1の役割が判明した。【1】は大長編の話の展開にもよく使われる手口であり、窓からポイ棄てではないが、「のび太の大魔境」では神成夫婦がどこでもドアを焼き払い、「竜の騎士」では、神成さんが不必要に巨大なハンマーでどこでもホールを破壊していた。「ドラえもん」の作品中における廃棄行為は、全てストーリーの転換を意味しているのだ。後で紹介する「ダンプカーの法則」にも似た要素がある。

 また、秘密道具を自分の価値観のみで勝手に廃棄してしまう行為を、我がパターン観測学会では”玉子イズム”と呼んでいる。野比家はもはや玉子イズムに染まっているのだ。本来一家の大黒柱であるのび助でさえも……。

■玉子イズムの法則

 マンガ本をはじめとするのび太の財産、ドラえもんの秘密道具の多くが、毎年玉子イズムの手によって廃棄されている。時には糸電話を、時には電話機をも…。

 玉子イズムは「ドラえもん」の母親だけにはじまったことではない。「ドビンソン漂流記」という超マイナーな作品でも、主人公マサルの母親が、ドビンソンの作った転送機械を「こんな危ない機械は壊しましょう」などと言って、ハンマーを機械に振り翳していた。とても恐ろしい母親であるが、F作品においてはさほど珍しいことではない。何故、F作品に出てくる母親は皆、こうも主人公の行動を邪魔するのだろうか?。

 趣旨のコーナーに述べたとおり、パターンは子供向けマンガのストーリーを立てるために選ばれた粒選りの素材である。パターン観測の視点で見る限り、先生や親をはじめとする作品中の大人達は、障害物という役割でしかパターンの中に入ってこないようだ。その法則が「ポイ棄て」に著しくあらわれている。

■他作品では

 この法則は、前掲の「ないものねだり」や「非連動式ポケット」のような「ドラえもん」ならではのパターンとは異なり、あらゆるF作品において見ることができる。例えば「ウメ星デンカ」の第一話(TC1巻)では、主人公の太郎がデンカ達を追い出すために、王様の玉座を「もう、おこったぞ。こんなものっ。ええい」などと言って二階の窓から投げ捨てている。「パーマン」でも、寝ぼけたミツ夫がパーマンバッジを二階の窓から投げ捨ててしまった(TC7巻P6)。勿論そのバッジは悪者に拾われて悪用されるはめに。とんでもない不手際である。自分がバードマンだったら、とっくにミツ夫を解雇&細胞変換銃で動物にしているだろう。しかしドラえもんのサイトで「パーマン」のツッコミまでしてたらキリがないから止めるが。

■ドラえもんが窓からポイ捨てする理由

 ちょっと疲れてきたので、ここからは趣旨から完全に離れて、作品中世界派的な考察も囓ってみよう。

 ポイ棄て行為は玉子イズムと最も関連深い要素があるが、一番積極的に窓から投げ捨て処分を行っているのは、入力システムであるドラえもん自身である。何故窓から投げ捨てることで解決してしまおうという心理が、22世紀のネコ型ロボットに働くのか?

 原因は彼が生まれた22世紀の街にある。22世紀にはタケコプターをはじめとする様々な空中交通手段が存在し、それらを普段から電車や車のように利用しこなしているから地上と空中の区別があまりない。なおかつ22世紀の地面は落下事故防止のため反重力安全装置が仕組まれているので(TC21巻のP63参照)加速度というものが存在しない。これらにより22世紀のネコ型ロボット君は、高いところから物を投げ捨てることがどれだけ危険な行為か実感していらっしゃらないようだ。

■のび太が窓からポイ捨てする理由

 上述のリストを見て驚いた人もかなりいらっしゃることだろう。最も凶悪な投げ捨てを幾度にも渡って行っているのがのび太である。

 その原因はもちろん母親の玉子と世話役のドラえもんからの影響であろう。彼も生まれた頃から窓から投げ捨てることが当たり前の環境の中で育ち、更に22世紀の空間観が知らぬ間に心に宿り……。彼もまた、全く罪悪感をかんじていない哀れな少年である。彼の人生が滅びるとしたら、それは多分窓からポイ棄て癖が原因であろう。


〜「窓からポイ棄ての法則」観測にご協力いただいた方々〜

おおはた氏・影月氏・まつはし氏・春井風伝氏・ポピー氏・KKK氏・ウミ

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