本末顛倒の法則
■ふたりで喧嘩、ひとりでも喧嘩
今度は主人公コンビ限定パターンである。ここでは、主人公コンビを「入力システム」と「中間出力システム」に分けて呼ぶことはない。どちらも出力システムである場合のパターンなのだから。
主人公コンビの間で、何らかの問題が生じる ↓ 解決策として秘密道具を使う ↓ 何らかの手違いで、想像もしなかったミスが生じる ↓ 結局、問題は解決したことにはならず、話は本末顛倒に ↓ 主人公コンビの間で、喧嘩が生じる |
本末顛倒系の話では、最後のコマで必ず主人公コンビが喧嘩をしているのである。相当パターン性の高いオチであるということが窺える。
■本末顛倒オチ履歴
発見場所 | 本末顛倒 | 備考 |
TC2巻 「タタミのたんぼ」 |
おやつに与えられたおもちが奇数だったため、取り合いになってしまった。それを解決するためおもちを259個に増殖したのだが、奇数なので結局取り合いに。 | この頃は日本でドラ焼きが大量に不足していて、飢えたドラえもんはおもちを食すことで欲求を我慢していたらしい。おもちを偶数にすればいいものを、飢えていたので知能はのび太並みに鈍っていたようだ。 |
TC7巻 「ウルトラミキサー」 |
おやつのドラ焼きがひとつだけだったので、2人も融合して1人になった。ドラ焼きは分けずにすんだが、その後の生活における価値観の違いで大喧嘩。 | 又々食い物がらみの物件。こいつらそうとう飢えてるぜ。涎の量も半端じゃないし。性格の不一致は離婚のプロセスと同じである。「1人で喧嘩しているのは誰ですっ」という母親の突っ込みもナンセンスでよろしい。 |
TC16巻 「シンガーソングライター」 |
作詞はともかく作曲ができない悩めるシンガーソングライターの機嫌をとるために自動作曲装置を貸す。しかし新曲発表会につきあわされ、責任のなすり合いで大喧嘩。 | 作詞はともかく作曲できないのは、はっきり言ってただの小学生である。楽譜も読めない喉から繰り出されるメロディはまさに殺曲。そして仮死に至らしめるような歌詞の数々。それを100曲聞かされる2人が場を忘れて発狂するのも無理はないだろう。 |
TC21巻 「ひろびろ日本」 |
自分の狭い価値観を国土の狭さのせいにした愚民共が、日本の面積を広げようと企てたが、洪水が起こるなどの大惨事に至って断念。「狭いままで広くできないの?」等という低脳な口喧嘩で締める。 | 「ないものねだりの法則」も入っている。 |
TC21巻 「行け!ノビタマン」 |
最初は宇宙へ飛び出してしまったことで喧嘩していたが、最後は地球に戻ってきてしまったことで喧嘩する。 | 両方とも口喧嘩。暴力に至らなかっただけでも、まあいいか。それにしてもこの話の本末顛倒はダイナミックである。2人の行動がまるっきりワンパターンだし。 |
TC25巻 「平和アンテナ」 |
「平和アンテナ」で世の中の争い事を無くそうという話だったのに、最後に使用者2人が大喧嘩を始めてしまうというとんでもないオチ。 | このオチの深い意味に気づいたのは最近のことで、メチャクチャ笑ってしまった。ドラはのび太の鼻に拳を入れ、のび太はドラのヒゲをひきちぎろうとする他に例を見ない大喧嘩。ここまで完璧な本末顛倒作品が他にあるだろうか? |
TC40巻 「人間貯金箱製造機」 |
意志が薄弱で無駄遣いしてしまう意志薄弱児のために、意志薄弱児指導員は意志薄弱児の薄弱な意志では絶対に開けられないと思われる未来の貯金箱を幾つも貸したが、意志薄弱児の「貯金箱を開けたい」という薄弱な意志は「貯金の無駄遣いはしない」という薄弱な意志を遙かに上回り、全てが無駄に。最後の助け船として「玉子貯金箱」を製造したが、予想外の事件で貯金消滅。大喧嘩に。 | 回想シーンを多用し、話が本末顛倒であることを証明してゆく効果的な演出。 |
TC42巻 「深海潜水艇たった200円!!」 |
旅行嫌いの親を持つ子のコンプレックスが生んだおねだりが原因。深海の楽園が火炎の地獄に変わって口喧嘩。 | ドリフのコントの如く黒こげになった主人公コンビを見て、他のレギュラーは(主人公側に)加わらなくてよかった、等とこぼしている。 |
TC43巻 「男は決心!」 |
意志薄弱児は「あいこグローブ」でジャイアンと互角の力で戦う予定だったが、達成できなくて指導員と戦いを始める。 | 「決心の法則」で始まり、「本末顛倒の法則」できれいに終わる作品。しかも最後のコマには御丁寧に「同じ強さなので勝負がつかない」という作者註まで入っている。 |
ぼくドラ18巻 「そっくりペットフード」 |
街中の動物達がドラえもんの顔になってしまったことで、「きみのせいだ!!」「自分がばらまいたくせに!!」と責任のなすり合いで喧嘩。 | 「ポイ棄ての法則」から連鎖。パターンアイテムの【テレビ】も挿入されており、効果的な演出となっている。 |
他にも発見された方は、掲示板で報告して下さい。
■結論
考えれば考えるほど面白くなってくる。乾物のようなオチである。
どんなに便利な道具でも、結局は使う側に全てがかかっている――というメッセージが込められているとも考えられる。
〜「本末顛倒の法則」観測にご協力いただいた方々〜
影月氏 |