燈篭

東京都日野市程久保


 いくらなんでもこんな狭い土地ぐらいほっとけよと思うかもしれないが、地価のフィルターを常時装着している東京人にとっては堪えうるものではなく、とうとう金網で陣取ってしまった。努力を怠らなければ、ただの法面(のりめん)もゴミ捨て場としてデビューすることができる。それにしても東京のゴミ捨て場というものは、切って割って足したようなものが多い。うちの近所にも、小川にかかる橋の両サイドにゴミ捨て場が取り付けられている例がある。ゴミ捨て場ごときに土地をやるのはモッタイナイという意識が、川の上にまでオーバーフローしているのだ。
 ここの場合、それでもまだモッタイナイと感じたらしく、正面にコンパクトな住宅地図が掲げられた。面積の小ささを、蛍光灯を内臓させることで補っている。設計者の工夫が滲み出た、内面も外観も趣深くそして極限までいじらしい物件である。
 どんなにいじらしくともそこが角地である限り、通行人の目に留まる。住宅地図に燈せられたこの明かりは、帰宅する住民達の心をホッと落ち着かせてくれそうだ。住宅団地の台燈篭。偶然、日が落ちた後に発見して本当に良かった。


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