アンダーグラウンドY字路
東京都渋谷区道玄坂
渋谷の街はY字路が多い。109も丸井も、巨大スクリーンも交番もみんなY字路の角地にある。ここは谷底の都市なので、整然とした碁盤目状の閉路が造りにくいのだ。街路のほとんどが坂道であり、みな同じ方向(低いほう)に向かって下っているので、交差点はY字路になる。そして全ての坂道が合流する谷底=駅前のスクランブル交差点は、通行人の動線が集約されて大変なにぎわいとなる。渋谷がここまで求心性の強い都市になれたのは、実はY字路と坂道という街路構造のおかげではあるまいか。
さて、当物件は京王井の頭線渋谷駅のプラットホームの真下にめり込むように形成されたY字路である。ガード下なので建築ができず、一等地(なにせ駅の真下である)の中の残余地となった。さすが一等地だけあって、クリスマス・イルミネーションが施されていたりと、郊外の残余地とは格が違う。
この土地の正式名称は「ウェーヴ(波)の広場」といい、芸術を装った無数の突起物が、ホームレスに占拠されるのを頑なに拒んでいる。腰をかけることもできないこの土地を「広場」と定義していいのかどうかは甚だ疑問である。