通天閣下

大阪府浪速区恵美須東


 鉄塔の4つの支柱に囲まれた空間のことを、「結界」と呼ぶらしい(銀林みのる,1994)。東京タワーの結界には、「東京タワービル」というレジャー施設が建っている。では大阪にある通天閣の結界はどうなっているのかと思って行ってみると、そこはただの「路上」であった。郵便ポストがあり、近所の食堂の幟があり、路上生活者がダンボールの上で寝ていた。
 企業でも公的機関でもない、地元の有志によって建てられたこの塔は、商店街の路肩に根をはり、路地を跨ぐようにして聳え立っている。そして、支柱部分に発生した余白には、劇場の看板やら王将のモニュメントやら、ローカルな物件で埋め尽くされている。
 ここ一帯は日本一日雇い労働者の多い地域でもある。毎日大勢の日雇い労働者たちが通天閣を見上げ、通天閣のもとで暮らしている。大阪の街における残余地は、古くから貧しい人々の生活の場として機能していた。
 ちなみに当物件の正式名称(?)は「王将広場」というらしい。


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