江ノ島
神奈川県藤沢市片瀬海岸
湘南の海といえば江ノ島が有名だが、路上のアスファルトの海の上にも、三角形の緑の小島が存在する。
鎌倉〜江ノ島〜藤沢間を走る江ノ島電鉄(通称:江ノ電)は、「線路」と「道路」の境界部分がきわめて曖昧な路線である。江ノ電が開通した100年前には、まだ両者の区別がなかったからだ。
例えば、踏切の中にY字路があったりする。そして踏切の中に角地が生まれる。そして踏切の中に看板地帯が生まれ、踏切待ちをする人と江ノ電の乗客両方に向けて情報が提供できる機能的な宣伝媒体となる。
「線路」や「道路」という概念に括られない、ある意味混沌とした車窓風景を初めて見たときは、度肝を抜かれると同時に新鮮さと奥ゆかしさが感じられた。混沌の中に、沿線住民の生活感が滲み出ているからだ。ジェーン・ジェイコブスは、ゾーニング(区分)をしないことこそが人間味のある都市をつくる第一歩であると言った。一度江ノ電の線路に沿って歩いてみると、「人間味」とはどういうものであるかが分かってくることだろう。