はじめに


1.街の隙間から垣間見れるもの

 区画整理された土地の全てが建蔽地(けんぺいち=建築物が占有する土地)になるわけではない。斜面や微妙な形をした狭い部分は、「建築」の相手にされることなく、「土木」のまま放置される。しかしそれは決して無駄な土地というわけではない。まず都心部など地価がものを言う地域では、意地でも有効活用してしまおうと試行錯誤がなされるだろうし、余白のままであっても、その空間自体が街並みの引き立て役になっていたりするのである。紙面の余白が字体を引き立たせる書道と同じである。
 当サイトでは”街並みの余白”である残余地の写真を採集し、土地利用を観測することを趣旨としている。とある町角の化粧もされていない無言の土地には、都市の様々な本性が露呈されているのだ。そこから日本の都市計画のあり方について一考してみるのも、また土地利用に表れる人間のいじらしさをただ嘲笑してみるのも良いだろう。

2.Y字路あるところに残余地あり

 交差点の道路と道路に挟まれた土地を土木用語で「角地(かどち)」と呼ぶが、この角地が鋭角であればあるほど建築物は建ち難くなるので、残余地である可能性が高くなる。もしあなたが万が一、このサイトを読んで「俺も残余地を見つけたいぜ!」と思ってくれる奇特な方だったならば、1:15,000の都市地図などでY字路を探し、そこを片っ端から当たってみることをおすすめする。
 ちなみに日本では古くからY字路の角地を人類の股間に見立て、そこに「道祖神」という、いかにも男性性器に見立ててみたと言いたげな(実際そうなのだが)フォルムの石塔を置く風習があった。角地はたいへん人の目に付き易く(これも人類の股間と同じ宿命なのかは知らないが)、現代でも道祖神に限らず宣伝媒体など、建築物以外のあらゆる物が設置される傾向があり面白味に長けている。

3.カキワリ構図

 残余地の写真を撮った後、その残余地が普段どんな風に使われているか、自分がそこに入ったらどんな風に使うだろうかという空想をめぐらす楽しみがある。それが拡大解釈でもかまわない。
 残余地の大半はカキワリ構図である。正面から見られることを目的としたものが多いからだ。余った土地を少しでも有効利用するために、様々なアイテムが集約的に置かれ、ゴチャゴチャした外観がまたカキワリ的である。人はそのゴチャゴチャの中に自分を投錨し、知らず知らずのうちに奥ゆかしい気分を味わうことができるのだ。

4.学問の言葉

 ここまで読んで、中途半端に衒学じみていて読みづらいサイトだと思われるかも知れないが、何故衒学じみてしまうのかといえば、それは趣味から学問への逃げ道を確保するためだ。何故学問へ逃げ込まなければならないのかというと、地味だからである。当サイトは路上観察のジャンルに属するだろうが、観測の対象としているものは笑える看板でもなければ浪漫・哀愁漂う廃墟でもない。いわば物件ではないものを物件として扱っている。文才のある人間ならば、趣味の範囲内で自分の言葉により町角の余白に命を吹き込むことができる。文才のない人間の場合、擬似的に学問の言葉の力を拝借して知ったかぶりをかます他ないのである。

5.注意事項

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