ないものねだりの法則

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■「自動パターン観測機」を出してほしい

 最初はやはり最も演出頻度が高く、最も有名な演出となった、”のび太のないものねだり”から紹介しよう。

(中間)出力システムが嫌な出来事に遭遇し、その出来事に対処するための願望を抱く

(中間)出力システムがその願望を具体的に名詞化させ、道具名にして入力システムに強請ることで、入力システムに出来事の全貌を把握させる

入力システムが拒否反応を示し、(中間)出力システムを突き放す

 作者もこれがパターンであることを明らかに意識しているようで、とにかく数が多い。パターン観測の初心者には、このネタから探すことをおすすめする。ただし「ドラえもん」を読めば読むほど次々に発見してしまい、パターン観測サイトの管理側としては、全て処理するのは至難の業である。「自動ないものねだり発見機」を出してほしいくらいに……。

■のび太イズム

 「作者が意図的に挿入していた」というよりも、もはやのび太自身が短編作品の基本パターン<のび太が悲惨な目に遭う→ドラえもんが道具で対処してくれる>を把握しており、作者の手を離れて一人歩きをしているような感じさえある。いずれドラえもんが道具でなんとかしてくれるだろうという彼の甘えが、何十年度にも渡って染みついて生み出されたパターンなのだ。

■ないものねだり履歴

 ※肌色はF先生亡き後の大長編からの出典。F先生の作風を受け継ぐものとして、一緒に掲載。

発見場所 おねだり 入力システムの拒否反応 備考
TC1巻
「かげがり」
草むしり機出してよ」 そんなものない  最古のないものねだりはこれか?
 人類は「草むしり」という仕事により、ないものねだりというコミュニケーションを覚えた。歴史的発見。
TC1巻
「走れ!ウマタケ」
「なくても、出してくれないと困るんだ」 そんなものないってのに!!  22世紀の最新型タケウマを強請っているシーン。「なくても出せ」というセリフは結構頻出。
TC2巻
「オオカミ一家」
オオカミつかまえ機かい」  のび太が勝手にネーミングした時点で、ないものねだりの一種と見なしてよいだろう。
目でピーナッツかみ機出してよ」 そんなのないなあ  本末顛倒オチの一種で、肉眼の筋力を用いて穀物を食すことで目的を達成できなかったことへの代償をしようとしている。
TC2巻
「このかぜうつします」
一発で治るかぜ薬はないの」 そう簡単にはねえ・・・
TC3巻
「ボーナス1024倍」
ボーナスをふやす機械はないかしら」 そんなのがあれば、苦労しないよ  名詞の動詞的用法+「〜かしら」=ないものねだり。
TC3巻
「ゆめの町、ノビタランド」
空き地を作る機械を出して」 土地だけは作れないなあ  ノビタランドに入居してからわずか1頁足らずで、夢は再びないものねだりに消えた。
TC4巻
「してない貯金を使う方法」
(ひそひそ話) ばかいえ!!そんな道具はないよ。勝手にお金を作るなんて、犯罪だぞ  読者に聞こえない所でも、ないものねだり。
TC4巻
「友情カプセル」
お金を作る機械を出しなよ。それから、歌手になれる機械テレビスターにもなりたいスポーツ選手にも……」 きみ、それはいくらなんでも欲張りだ  スネ夫のないものねだり。
TC6巻
「夜の世界の王様だ!」
自動ラーメン作り機ってない?」 ないよっ!かあさんに作ってもらえ!  「自動的にラーメンを作る」という願望は叶ったのだから文句はない。夜更かしを好んで行うような不良小学生から見れば、母親など所詮「自動飯作り機」にすぎない。
TC6巻
「ダイリガム」
ボールを作る機械を出してよ」 そんなものあるかよ  ボールを作れるような機械なんて、ポケットの中にゴマンと持ってるじゃんかよ。
TC9巻
「無人島の作り方」
「なんか出してよ、空中に土地をつくる機械とか」 そんなのないない!  数十年後の大長編ではこれが実現しているのだから、ないものねだりもなかなか侮れない。 
TC10巻
「たとえ胃の中水の中」
「はやく!なにか出せよ。からだを切りはなすのこぎりとか、またつなぐセロテープとか」 (無表情)  実際にそういった秘密道具は存在するので、のび太がこんなことを言い出すのも仕方がない。
TC10巻
「のび太の恐竜」
鼻でスパゲッティ食べる機械を出してくれえ!」 できることかできないことか考えてからしゃべるもんだ!  誰もが知ってる大長編vol.1だが、2巻「オオカミ一家」との比較するために、あえて短編版のほうから解説させてもらう。99%焼き直しオチだが、こちらは「口以外の呼吸器から麺類を試食」という課題である。小学生の頃からこんなことばっかりしてる彼等の将来が心配だ。
TC11巻
「とりよせバッグ」
忘れ物しない薬ないかしら」 薬は、ないけどね  余談だけど、自分もランドセルを学校に忘れて帰ったことがあるな。
TC11巻
「ジャイアンの心の友」
爆弾をくれ!」 ええっ!  実は「爆弾」はないものねだりでないことは、ドラファンなら誰もが知っていることである。
 「○○を殺して僕も死ぬ」というセリフは、「お前の物は俺の物…」に並ぶ名言かもしれない。
爆弾を20個出してくれえ!」 (オチ)  ないものねだりで始まって、ないものなだりで終わる話。しかし20人に苛められるなんて、本当についてないな。
TC12巻
「正義の味方セルフ仮面」
正義の味方を出してくれ」 アホか  この頃のドラえもんはクールです。
TC12巻
「大男がでたぞ」
大男になるくすりを出してくれ」 むりいうな。  ドーピングはいかんぞ。
TC13巻
「チョージャワラシベ」
グローブが破けちゃった、新しいのが欲しいんだ。出して」 だんだん遠慮がなくなってきた。欲しいからって、なんでもかんでも簡単に手に入ると思うのは、考えが甘いぞ  初めから遠慮なんかないだろう。それこそ1巻「かげがり」の頃から。
TC13巻
「ロケットそうじゅうくんれん機」
「宇宙へ……」 行きたいから、ロケットを出せなんて言っても駄目っ!  『失言の法則』へ連鎖。
TC16巻
「びっくり箱ステッキ」
「くやしいから、ぼくにもびっくり箱を出して」 そんなもの出しても、なんにもならないだろ  『失言の法則』へ連鎖。
TC16巻
「ドロン葉」
「どうしても実験したい。タヌキを出して」 むちゃいうな  実験動物を請求しておられます。本当にこの人、動物に優しいのでしょうか。
TC16巻
「宇宙ターザン」
視聴率上げ機を出してくれ。さあ、出せ!」 むちゃいうな。そんなものないよ
TC18巻
「テレパしい」
「口に出さなくても心は通う。ぼくが何をしてほしいか、なにを望んでいるか・・・そんな道具はないかしら」 口きくのもめんどくさけりゃ、もう死んでしまえ  遂にないものねだりまでないものねだりで表現しだしたこの男。この話は全てがパターン任せで、中間出力キャラであるのび太は何もせずに、あっという間にオチに至ってしまった。
 まあ時には全てをパターンに委ねる生き方もいいだろう。しかしそこに待っているものがあるとすれば、それはきっとキツネ男の意地悪と近所の頑固親父と、ガキ大将の暴力だろう。
TC19巻
「影とりプロジェクター」
星野スミレの秘密をさぐる道具を出して!!」 関係ないだろ。星野スミレがだれとけっこんしようが。そんなくだらない目的に、使う道具はない!!  結局、交渉は成立するんだがね。
TC19巻
「クイズは地球を巡る」
クイズ解答機を出してよ」 そんなのあるか
TC20巻
「アヤカリンで幸運を」
いいことあった人すぐさまみつけ機出してよ」 そんなものないよ!!。それくらい自分の力で探しなさい!!  如何にもそのまんま。
TC20巻
「ココロコロン」
持ち主探し機を出してよ」 ないよ
TC23巻
「オキテテヨカッタ」
夜中でもやってる本屋テレビを出してえ」 うるさいなあ  ないものねだりは、夜中によく発生する。
TC24巻
「火災予定報知ベル」
消防車とか、消防服とか、出してよ」 それはないけど
TC24巻
「しずめ玉でスッキリ」
「ねえ、もっとしずめ玉を出して」 ない!!ない!!  ないものねだりで終了。
TC26巻
「魔女っ子しずちゃん」
またまたそんな!人を魔法使いにする道具なんてあるもんか!!いつものことだけど、君はおっちょこちょいなんだよ。ろくに考えもせず、安請け合いして・・・  この後のび太は”いじけモード”に。
 「失言の法則」的なないものねだり。
TC28巻
「地平線テープ」
地平線出して」 出せるか、そんなもん
TC29巻
「翼ちゃんがうちへきた」
テレビ局の偉い人と知り合いのパパを出して」 またそんなむちゃくちゃを・・・  「権威と知り合いのパパを出せ」ネタ。
TC30巻
「ねむりの天才のび太」
居眠りしながら起きていられる薬を出してくれ」 (不在)  ナンセンスだ。
TC30巻
「ハツメイカーで大発明」
ジャイアンやスネ夫にいじめられそうになったら、サササッと逃げたいんだ。そんな道具を出してよ。」 君って奴は……。そんな道具より、いじめられないようにしっかりしろよ
(以下、『毒舌の法則』へ連鎖)
 というわけで、『毒舌の法則』参照。
TC31巻
「まんがのつづき」
出版社の社長と友達のパパを出してくれえ」  また「権威と知り合いのパパを出せ」ネタ。
TC33巻
「フィーバー!!
ジャイアンF・C」
「たのむ!!ファンクラブ製造機を出してくれ!!」  なんとジャイアンがないものねだりしている珍しいシーン。
TC33巻
「SLえんとつ」
リニアモーターカーのえんとつをかして!!」 (オチ)  そんなものあったらSL以上に止まれないぞ。
TC39巻
「四次元若葉マーク」
学校を近くに引っ越しさせる機出してえ」 そんなもんあるか  「出して」の後に「え」をつけてる口調がウケる。「ミンクのコート買ってえ」というセリフにも爆笑した覚えがある。
TC41巻
「世界の昆虫を集めよう」
世界の珍種昆虫らくらくつかまえ機を出して」 ない!!  のび太の性格は一概に「自然や動物にいたわりのある少年」と表現されることが多いが、「コンチュー丹」しかり、虫に対してはかなり残酷である。その反面に間接的に虫の命の大切さを伝えているF先生の演出力の凄さを感じる。
TC43巻
「ネコののび太いりませんか」
「でもママの動物ぎらいはきょくたんすぎると思うんだ。きっとネコやイヌのかわいさをしらないからだよ。だからママに、動物と、つきあう楽しさを教えてあげたらと。それで…、そのための道具、なんかだして」 そんな道具聞いたことないよ  決心型ないものねだりの一例。
TC43巻
「かしきり電話」
会場出してよ」 そんなもんあるかよ  不動産物ないものねだり。
TC43巻
「合成鉱山の素」
ないね、電池なんか  入力システム側がないものねだりを復唱する場合、名詞の後に「〜なんか」「〜なんて」という見下した表現が付くことが多い。
TC44巻
「虫よせボード」
広い庭を出して」 無理言うな  不動産物ないものねだり。
TC44巻
「ハワイがやってくる」
飛行機を出して」 もっていない
TC45巻
「うきわパイプ」
冷たくなくて、広くてすいてて、絶対おぼれないプールを出してよ」 そんなのあるか  不動産物ないものねだり。
大長編
「鉄人兵団」
ビルみたいにでっかいロボットを出して」 気軽に言ってくれるなあ。そんなでっかいロボットが、一体いくらすると思ってんだ!!  この一小学生のないものねだりが無ければ、地球は滅亡していただろう。
大長編
「日本誕生」
地面製造機を出して!!!」 そんなもんないよ!!!  不動産物ないものねだり大長編ver。
 この大長編の伏線全てを、ないものねだりが表している。
大長編
「ドラビアンナイト」
「じゃ、空飛ぶじゅうたんを出してよ」 そんな物ないの!
大長編
「ブリキの迷宮」
「おーい。苦労せずに泳げる道具を…」 な、い、よ  この大長編自体巨大な無い物ねだりではあるまいか。
道具に頼らずすむ道具はないかしら」 (オチ)
大長編
「宇宙漂流記」
自動星よけ機はないのか!!」 そんなのないよ  ジャイアンのおねだり第二弾。本来ないものねだりすべきであるのび太が解決策を言っているのが、作者亡き後のないものねだりであることを物語っている。でも、安直なネーミングはそのまま受け継がれているし・・・。
大長編
「翼の勇者たち」
自分の力で飛べるもの出してえ〜」 もう何も貸すもんか。なんか欲しけりゃ自分で作りな!  このあと、本当にのび太が翼を自分で作っている。この言葉の影響力はすごい。
FF9巻
「ロボット雪だるま」
雪だるまを作る機械を貸して」 そんなの、あるもんか  嘘つけ。ドラえもん初心者は、くれぐれもだまされないように。
FF29巻
「はなバルーン」
フーセンガムふくらまし機を出して」 おい、そんなばかばかしい機械があると思ってるの  このあとのび太が「なくてもいいからかして!!」などとおっしゃっている。
FF31巻
「すなおなロボットがほし〜い!」
「いつも同じこと聞くようだけど、宿題やってくれる機械ってないかしらねーえ」 ない!!
そんなもの、たとえあってもかさない!!
 ないものねだりがパターン化されていることを意志薄弱児が示している。
CS1巻
「海水コントローラー」
どんな下手くそでもサーフィンにすぐ乗れ機を出してっ」 そんな機械あるもんか。だいいち泳げもしないのに  ないものねだりが波乗りの如く2回連続でパターン連鎖している。しかも道具名の部分はご丁寧に字体が変わっていて、ないものねだりに対する情熱が感じられる。さすがカラー作品。ドラの手足は肌色だし。恐るべしカラー作品。
「じゃ、どんな下手くそでもすぐ泳げる機を」 ないよっ!
CS1巻
「戦車ズボン」
ズボンを出して」 ないよ  ネコ型ロボットは年中全裸だもんね。
CS3巻
「あめんぼう」
ころばないローラースケート出して」 そんなのないよ  大嘘。だまされるなよ、ドラえもん初心者。
CS3巻
「マリオネッター」
自動宿題機おつかい機草むしり機出して」 そんなものないっ  絶対に宿題を忘れてはならない日がやってきて、おつかいを頼まれて、草むしりをさせられる運命は君のパターンなのだよ。いかなる理由があれど、登場人物はパターンに逆らえない。世界が砕け散ろうとも、彼が最も必要としているものは「自動宿題機」「おつかい機」「草むしり機」なのかもしれない。
CS3巻
「ラジコンのもと」
ラジコンがほしい」 ラジコンはないけど
CS4巻
「おとりケース」
カブト虫出して」 そんなもの、持っていないよ
PK2巻
「クルリン自動車」
自動車出して」 ないよ、そんなもの  また大嘘。この後、「でも、自動車はないよ」「ないったら、ない」と二度に渡って嘘の上塗りをしている。ないものねだり以外の話の展開は、ぼくドラ8巻「ラジコンねん土」と全く同じ。
未収録作品
「ふわりねんど」
風船を出して」 ないよ
ぼくドラ3巻
「三月の雪」
「ドラえもん、自動雪かき機出せえ」 (不在)  このページの左側の挿絵が片倉陽二テイストなのは何故?
ぼくドラ12巻
「ダルマさんころんだ帽」
まんが取り返しマシンを出して」 そんなものあるか!!  「〜機」ではなく「マシン」と言っているのが新鮮。ちなみに初出時は「ダルマさん、ころんだ帽」(点がある)。

 他にも発見された方は、掲示板で報告して下さい。
 ※入力システム以外へのないものねだりは含まない。

■藤本先生以外の作品で「ないものねだり」が多い理由

 上の表みてまず気付くのは、F先生以外の人(元アシスタント等)が手がけた作品にも、ないものねだりが多く見られるということだ。これは作者以外の方々も、「ないものねだり」というF流パターンをよく理解している証拠である。


〜「ないものねだりの法則」観測にご協力いただいた方々〜

タカマサ氏・Dai-chan氏・Bakethu氏・影月氏・春井風伝氏・ポピー氏・KKK氏・GASA氏・YM氏・ウミ氏・ナン氏・pisu氏・JERALD氏・ラバンピス氏・スクーバー氏・ティ濾器

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